イルカを食べるのって、野蛮ですか?
どうです、この写真? 可愛いですよね?
この可愛い子犬をね、食べちゃうんです。
あ、食べちゃいたいくらい可愛いとかそういう話じゃないですよ。
本当に食べちゃうんです。
今回は、こちらの記事。
朝鮮に食犬の文化があることはよく知られていると思います。
上記の記事は、本来なら人間に食べられるはずだった犬たちが救い出され、アメリカでペットとして育てられることになった、というような内容ですが、記事を読んでいてまず目に入ってくるのが、可愛い子犬の写真です。
可愛いですよね。こんな子犬を食べてしまうとは、なんて野蛮なんだと思いませんか?
でもちょっと待ってください。
救出された犬は23匹。
23匹すべてが、こんなに可愛い子犬だったんでしょうか。
いやいや、そんなことないですよね。
きっと中には不細工な成犬もいたはず(まだ全頭が到着していないとはいえ)。
でもいきなりあの可愛い子犬の写真を見せられて、そして「このワンちゃんがそのうち食べられるんですよ」なんて言われると、「なんて野蛮なんだ」と思っちゃいますよね。
ここで私が思い出すのが、和歌山県太地町のイルカ漁です。
私個人としては、長年培われてきた文化というのはできるだけ尊重されるべきだし、それに牛や鳥はOKで(私は毎日のように食べている)、イルカを食べるのは野蛮だというのは理屈が通らないよなあ、と思っています。
つまり、シー・シェパードなんかがやってきて太地町のイルカ漁を妨害するようなことをやっているみたいだけど、それは日本の(特定の地域とはいえ)文化なんだから、ほっといて欲しいよなと思っている人間なわけです、私は。
そんな私でさえも、あの可愛い子犬の写真を目にして、そしてこの犬がそのうち食べられていたかもしれないと知ると、「なんて野蛮なんだ」と思ってしまう。
そのとき、「牛や鳥はOKで、犬はダメというのはどういうことなんだろう」という素朴な疑問はきれいに吹き飛んでいる。
文化とか伝統とかに思いをはせる前に、「この可愛い子犬が」という感情が先に立ってしまう。
こう考えたときに思うのは、イルカにしろクジラにしろ犬にしろ、食文化に関するさまざまな論争というのは、結局はメディア的な印象で決着がついてしまうんだろうなということ。
きっと世界中の人々は、目がクリクリっとしたイルカの写真をまず見せられて、そしてそのあと「日本の太地町ってところでは、こんな可愛いイルカちゃんを食べちゃうんですよ」って言われて、「日本はなんて野蛮なんだ」と思ってるんでしょう。
日本の食文化を本気で守ろうと思えば、そういう「印象操作」とも本気で立ち向かわなければならない。
そんなことを思った記事でした。
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