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勉強のやる気をなくした時に読む本 星新一「明治・父・アメリカ」

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漫画家の方たちは描けなくなったとき、描くのが苦しくなったとき、モチベーションを失いそうになったときには、藤子不二雄Aの「まんが道」を読むそうです。

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

藤子不二雄両先生の半自伝的なこの作品、私も大好きです。二人の少年が互いに励まし合いながら、まんが道に邁進する姿は、何の才能もない私でさえも創作意欲のようなものをかき立てられてしまいます。

漫画家に限らず、創作に関わる人にとっては「栄養ドリンク」のような作品なのでしょう。


で、ここからが本題なのですが、漫画家なら「まんが道」、じゃあ英語の勉強をしている人向けの栄養ドリンクって何がある? と考えたときに紹介したいのが、こちらの本です。

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

明治・父・アメリカ (新潮文庫)




星新一が若き日の父を描いた評伝

ショート・ショートでおなじみの星新一が、若き日の父親を描いたのがこの作品。

星新一のお父さん、星一(はじめ)は、一代で「星製薬」を築いた苦労人。そんな星一の、生まれてからアメリカ留学、現地で事業を起こしその後帰国するまでの姿を、息子である星新一が描いています。

ではなぜこの作品が語学を勉強している人(に限らないですが)にオススメできるのか?

それは、主人公の星一が留学先のアメリカで数々の困難に出会いながらも、持ち前の勤勉さと人柄、そして普通を良しとしない機転の良さで力強く前進して行く姿が我々の胸を打つからです。

しかも、星新一らしい簡潔でテンポの良い文体で描かれているので、読んでいるほうも一緒になって前に進んでいるような気になってきます。

たとえばこんな具合。

星新一はアメリカへ渡った直後に、現地の日本人に騙され持ち金のほとんどを失います。そこで、現地の一般家庭に住み込みで働く「スクール・ボーイ」をやろうとするのですが、なかなか雇ってもらえない。

そんな中、給料は安いが人使いの荒いユダヤ系未亡人の家で働けることになります。首にならないよう必死で働く星一。

スクール・ボーイも含め、アメリカでは使用人は日曜休日が原則である。しかし、星は日曜も平日と同じく働いた。一ヶ月ほどすると、やかましやの未亡人も星に満足感を示すようになった。小言のたねがつきたのだ。
星は仕事になれ、時間に余裕が持てるようになった。<中略>
星は主婦に申し出た。
「昼間、学校へ行かせてもらいたいのですが」<中略>
星は近くの小学校の四年に入学した。満二十一歳になろうという時である。

こうして星一は、ほぼ無一文、頼る人もいないアメリカで努力を重ね、少しずつ英語を身に付けていきます。

その後ニューヨークのコロンビア大学に入学した星一ですが、相変わらず金銭的には苦労していました。

そんなとき、星一は邦人向けの日本語新聞を発行することを思い立ちます。

星は新聞というものに興味を持ちはじめ、自分でも新聞を発行しようという気になった。石版刷の小規模な日本語新聞をである。<中略>
星は学校へかようかたわら、それをやった。毎週一回、記事を作り、印刷し、郵送するのである。部数ものび、やがては四百部ほどになる。利益もあがった。

とまあこんな感じで、内容的には分かりやすい立身出世譚なのですが、普通なら暑苦しくなりがちなところを、さすが星新一と言うべきか、淡々と小気味よく話を進めてくれるので、スラスラと読み進めることができます。

その勢いに乗って、なんだか自分でも何かやれそうな気がしてくるから不思議。

というわけで、英語の勉強(に限らないのですが)に疲れて、何だかやる気がでないという方は、ぜひこの評伝を読んでみてください。

さほど長くなく難しい表現もないので、短時間で元気をもらえますよ。

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

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