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「村上さんのところ」に村上春樹の海外人気を見る

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村上春樹が読者からの質問に答える企画、「村上さんのところ」。

すでに質問の受付は終了していますが、村上さんは今も精力的に読者からのメールに答えています。

村上春樹といえば海外でも非常に人気が高いことで知られていますが、この「村上さんのところ」もサイト開設時に海外のいろいろなサイトで取り上げられていました。

Japanese novelist Haruki Murakami is to offer advice to troubled readers in an agony uncle column on his website, his publisher said Tuesday.


Japanese novelist Haruki Murakami has started offering opinions and advice on queries from fans in an online agony uncle column

さらには本家サイトを英訳するWebサイトまで登場しました。
https://mrmurakamisplace.wordpress.com/
(閉鎖済み)

「村上さんのところ」を読みたいという海外の読者の多さがうかがい知れます。

これだけでもじゅうぶんに海外での村上春樹人気の高さが分かるのですが、さらにすごいのは、村上さんが読者に宛てた返事そのものが、逐次海外サイトで取り上げられているところです。

村上春樹は読者からのこんな質問にこう答えた、というのが小さいながらもニュースとして海外で取り上げられている。世界的に見ても、ここまで人気のある作家というのはそういないのではないでしょうか。

というわけで今回は、海外サイトで「村上さんのところ」がどんなふうに取り上げられているのか、見てみたいと思います。




やっぱりみんな、あの独特な比喩が好き

「恋をするというのは、猫が足を滑らせて、回っている洗濯機の中に落っこちたような状態」

これまで一度も恋愛をしたことがないという読者に対する村上さんのお返事。

以下の記事では、このような取り上げ方をされています。(AFP-JIJIの配信記事)

In one recent post on "Murakami-san no tokoro" ("Mr Murakami's place") the author of Norwegian Wood told a 22-year-old woman who claimed never to have fallen in love that the feeling is akin to "a cat slipping into a whirling washing machine."

「恋をするというのは、猫が足を滑らせて、回っている洗濯機の中に落っこちたような状態のことです」という、いかにも村上春樹といった比喩の使い方に注目していますね。

「文章を書くというのは、女の人を口説く」ようなもの

文章を書くのが苦手という読者に対する村上さんのお返事。

guardianの記事では、その冒頭で取り上げています。

Writing is like “chatting up a woman”, Japan’s superstar novelist Haruki Murakami has said: “You can get better with practice to a certain degree, but basically, you’re either born with it, or you’re not.”

文章を書くことは「女の人を口説く」ようなもの。このシャレた言い方が多くの読者を惹きつけているのでしょう。

偉大な作家とポップカルチャー

村上春樹といえば作品内に欧米のポップカルチャーをアイテムとして登場させることでも知られていますが、そのあたりもやっぱり面白がられているようです。

ジョン・フルシアンテのいないレッド・ホット・チリペッパーズをどう思うかと訊かれた村上さんのお返事。

この前、ブルーノ・マーズのスーパーボウルのステージでレッチリを見ました。相変わらずかっこいいですよねえ。成熟しないところが素敵です。人間って、つい成熟しちゃうんだよね。気をつけなくては。

Voxは、この返事を「ハルキ・ムラカミ、レッチリが老いについて教えてくれると考える」というタイトルで記事にしています。

it's not super surprising that a man who sets many of his novels inside a Denny's also likes The Red Hot Chili Peppers,

多くの小説でデニーズを舞台にしてきた男が、レッド・ホット・チリペッパーズを好きだというのはそれほど驚くにあたらない

「アフターダーク」以外でデニーズが登場する小説って、何があったっけ??

この記事で少し面白かったのが、

It's strange that Murakami picks the Bruno Mars Super Bowl halftime show as his point of reference for the Chili Peppers still rocking, as that is a show during which Flea, the bassist, didn't even plug in his instrument.

なぜレッチリに言及する際にスーパーボールのハーフタイム・ショーを取り上げるのか。あのステージではフリーはベースをアンプに繋いでさえなかったのに、というわけです。

2014年のスーパーボールのハーフタイム・ショーでは、レッチリが事前に録音しておいた演奏を流していたことが後になって発覚してちょっとしたニュースになりました。なんぜわざわざそんなステージを引き合いに出す? という軽いツッコミですね。

どうしてこんなに人気があるのか?

村上春樹はどうしてこんなに人気があるのでしょうか?

もちろん作品の素晴らしさが第一でしょうが、"publicity-shy"であまり人前に姿を表さない点がその作風と相まってミステリアスさを醸し出し、人々の好奇心を煽っているのかもしれません。

In addition to advice and questions about literature, Murakami may be seeding a mystery for readers. In two separate questions -- about his favorite author and the end of the world -- he replies with an unknown name, Toshiko Nekoyanagi. "I did some searching and cannot figure out who the heck Toshiko Nekoyanagi is," the translator writes. The name might be someone obscure but real, or just nonsense, or perhaps it's a character in an upcoming book.

アドバイスや文学に関する質問に加えて、ムラカミは読者にミステリーを植え付けようとしているようだ。<中略>
彼は「猫柳俊子」という未知の名前を返信に書いている。
「ちょっと検索してみたけど、いったいぜんたい猫柳俊子っていうのが誰なのか分からなかったよ」翻訳者*1は書いている。

「猫柳俊子」は村上さんの口から出任せ、冗談だと思いますが、こんなところでも村上春樹の「ミステリアス」が増幅されているようです。

翻訳者の方は真実にたどり着けたのだろうか。

以下が「猫柳俊子」が登場する質問です。




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こんな記事はどうでしょう?



*1:「村上さんのところ」を英訳していたサイトの翻訳者のこと